[レポート] サステナブルでパフォーマンスの高いソリューションをスケールして提供するには #AWSSummit #SUS201

[レポート] サステナブルでパフォーマンスの高いソリューションをスケールして提供するには #AWSSummit #SUS201

AWSが行っているサステナビリティ(環境を配慮した持続可能な取り組み)と、フォルクスワーゲン社がAWSを活用して実現したサステナブルな事例に関するセッションレポートです。
Clock Icon2023.05.08

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Guten Tag, ベルリンから伊藤です!

今回は 2023年5月4日(木) ドイツのベルリンにて開催された AWS Summit Berlin 2023 に参加したので、そのセッションをレポートします。

今回のテーマは、クラウドにおけるサステナビリティ

"Sustainability"の訳は「持続可能性」で、運営として長く続けられるようなシステム設計かといった意味でも使われますが、今回は「地球環境に配慮して継続的に利用できる仕組みか」という観点です。本文では区別するために、主に「サステナビリティ」と訳しています。

ドイツでは、商品の梱包は最低限の紙製だったり、ストローやフォークなどもプラはほとんど見ないほど環境への配慮に対する意識がかなり高く、とても注目されている分野です。

AWSがどのような取り組みをしているか、そしてAWSを活用したフォルクスワーゲン(VW)の事例についてのセッションです。

セッション情報

  • 時間:11:15-12:00(45分)
  • タイトル:Delivering sustainable and performant solutions at scale
  • スピーカー:
    • Karsten Schroer, Sustainability Solutions Architect, AWS
    • Szymon Kochanski, Solutions Architect, AWS
    • Thomas Oldemanns, Head of Sales Strategy & Transformation Program Future Wholesale & Retail, Volkswagen AG
  • レベル:200(中)
  • 概要:

In this session, learn about the sustainability journey of Amazon and AWS, as well as how you can leverage the cloud to reduce the environmental impact of IT and solve sustainability challenges outside of IT. This session walks through architectural patterns and design principles from the AWS Well Architected Sustainability pillar, and how customers have integrated these to reduce the environmental impact of their workloads. Hear from Volkswagen how they developed a data analytics architecture to measure the carbon footprint of their retail operations in order to enable detailed reporting and to identify regions for improvement in infrastructure, choosing green energy.

本セッションでは、AmazonとAWSのサステナビリティの歩み、また、クラウドを活用してITの環境負荷を低減し、IT以外のサステナビリティ課題を解決する方法について学びます。本セッションでは、AWS Well Architected Sustainabilityの柱となるアーキテクチャパターンと設計原則を紹介し、お客様がどのようにこれらを統合してワークロードの環境負荷を低減してきたかを説明します。フォルクスワーゲンが、小売業のカーボンフットプリントを測定するためにデータ分析アーキテクチャを開発し、詳細なレポートを可能にし、インフラやグリーンエネルギーの選択など改善すべき領域を特定する方法を聞きます。(DeepL翻訳)

セッションレポート

AWSの取り組み

AmazonとAWSが環境のためにやっていること

  • 2019年、Amazonは2040年(パリ協定の10年前)までに事業全体で炭素をゼロにすることを約束する「The Climate Pledge」を共同設立
  • Water Positive - AWSは2030年までに、データセンターで使用する以上の水を地域や環境に還元するようにする
  • 再生可能エネルギー
    • Amazonは2025年までに100%再生可能エネルギーでの事業運営を目指している
    • 再生可能エネルギーを購入する世界最大の企業でもあり、2021年時点でAmazon全体の85%を達成(フランクフルト拠点もその一つ)
  • 451 Researchによると
    • 他のデータセンタと比べ、AWSは顧客の利用負荷のCO2排出量を80%近く削減できる
    • AWSが100%再生可能エネルギーで駆動されるようになると、最大で96%削減できる

クラウドにおけるサステナビリティ

以下の3つの種別がある:

  • OF the cloud: クラウドプロバイダによるクラウド自体の取り組み
    • エネルギー効率の良い端末を使う
    • 再生産エネルギーを使う など
  • IN the cloud: クラウド利用者によるクラウド上の取り組み
    • クラウド利用の最適化、適切なサービス利用・クラウド設計
  • THROUGH the cloud: クラウドを使うことによる影響
    • クラウドを使うことで実現できる事業のサステナブル化

以下の図では、オンプレからクラウド移行、最適化、そして変革を遂げるという流れにおいて、上記3つがそれぞれCO2削減に関与しており、またそれらを達成するに伴ってビジネスの成長と効率的なリソース活用をもたらす、ということが示されています。

KPI x ゴール

  • サステナビリティのKPI:リソース使用量 / ビジネス指標
  • 温室効果ガス排出量&コストを減らすというゴール
    • エネルギーやインスタンスに関してはAWSの責任範囲
    • いずれを満たすにも、AWSサービスの最適な利用が直結している
  • KPIの主なデータソースはこの2つ:
    • CloudWatch メトリクス - 70以上のAWSのサービスからデフォルトメトリクスを収集
    • CUR (Cost and Usage Reports): 日次または時間単位で、AWSリソースレベルの包括的なコストと利用データのセットを提供

  • これらをS3に格納し、AthenaとQuickSightを使った簡単なアーキテクチャで可視化ができる

  • QuickSight で可視化した一例:
    • 端末のチップタイプごとの利用分析
    • 単一のインスタンスタイプのみを利用しているプロジェクト、古いインスタンスタイプがまだ利用されている、などが分かる

  • サステナビリティに向けた最適化ツールの導入
    • まずは入れてみて情報を得て、それから深く探っていくと良い
    • 検討するべきレイヤーとしては、ニーズに合わせること、ソフトウェア更新、適切なストレージティア・ハードウェアの選択、社内プロセス等がある
    • 各レイヤーで次の図のようなツールが活用できる:特に Trusted Advisor、様々なメトリクスから集計できるCompute Optimizer、S3の利用状況を可視化してコスト・リソースの提案をしてくれる Storage Lens

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Carbon Accountingとは

Carbon Accounting(炭素会計)

  • お金でなく、組織の排出する温室効果ガスを計上する
  • 排出量は、温室効果ガス(GHG)プロトコルにより下図の3つのスコープに分類される
    • (※この業界で標準的な枠組みだそうです)
    • 図:CO2をはじめ対象となる温室効果ガス、ビジネスの工程ごとのスコープと例が示されている

クラウド持続可能性(AWSドキュメント)にて分かりやすい日本語の説明がありました:

スコープ 1: 組織の活動から、または管理下にあるすべての直接排出量。例えば、データセンター用バックアップジェネレーターの燃料燃焼です。

スコープ 2: データセンターなどで購入し使用する電力による間接的な排出量。例えば、商用発電からの排出量などです。

スコープ 3: 管理できないソースからの組織の活動によるその他すべての間接的排出量。AWS の例には、データセンターの建設や、データセンターに設置される IT ハードウェアの製造や輸送に関連する排出量が含まれます。

炭素会計のソリューション

  • 行動データを入れる
    • 自動入力:データベースやERPシステムからAPI等を使う
    • 手動入力:エクセルやアンケート回答等
  • ETL - データを事前にクリーンアップ
  • 排出量計算エンジン
    • 温室効果ガスの総排出量(kg)を計算
    • 行動データと指標値(一般に公開されているデータ等)を掛け合わせ
  • データのエクスポート
    • ファイル、API、カスタム形式で
    • 組織の情報開示レポート、分析してマーケティングに活用など


VW による取り組み

「測定できないものは改善できない」

  • プロジェクト開始時は大きな課題
    • 小売業におけるCO2排出量は推定値に過ぎず、リアルなデータはない
    • 小売業自身が直接データ収集するという新たな方法が必要
    • 世界中に幅広い販売ネットワークがある中で、参画は任意につき説明と奨励が大変

システム構成

  • 収集データのファイルアップロード
    • Amazon Cognitoを使ってVWグループのクラウドIdPによるOpenID Connect認証
    • API GatewayによるAPIサービス(Cognitoとも統合)
    • S3を使ったウェブホスティング
    • Lambdaの処理で、S3へアップロードしたファイルに期限付きの署名付きURLを生成
    • アンチウイルスサービスをEC2
    • 各種イベント駆動とメール通知にAWS SNS
    • ファイルのステータスなどバックエンドデータ管理にNoSQLのDynamoDB
    • チェック後、データレイクとなるS3バケットへ

  • データレイク側の詳細図

VWグループのゴール

  • goTOzero - フォルクスワーゲングループの環境を配慮した変革キャンペーン
    • 経営活動のメインフォーカスはEnvironment(環境)、そして付随してSocial(社会)とGovernance(ガバナンス/企業統治)
    • オンライントレーニング、ガイドブック、相談窓口などネットワークへのサポートを提供
    • 先述のシステムを使って毎年CO2評価
    • 遅くとも2050年までにサステナブルとカーボンニュートラルを達成する

最後に改めて、キーとなるのは

  1. Measure - まずは計測する
  2. Optimize - 最適化する
  3. Innovate - そして変革していく

ことである。

Q&A

最後に、AWSのプレゼンターの方に質問をさせていただきました。

Q. クラウドプロバイダとして、規制などはありますか?
国によって異なり、KPIを定めてレポートするといったことは必要である。

Q. 高コンピューティングなど高い技術のために、サステナビリティ実現が低下するといったことはないですか?
例えば(キーノートでも述べられた) AWS Graviton など、高いパフォーマンスを実現しながら、環境負荷としても大きく改善しているサービスを開発している。

欲しいものだけを作っているのではなく、どのようにサステナブルな事業を展開できるかというのは、クラウドプロパイダ間でも競っている点の一つ。

Q. 「クラウドはたくさんのエネルギーを使うから環境に良くない」といった声もありますが、どう思いますか?
人は石器時代に戻ることはできず、前進している。

クラウド自体はエネルギーを使うかもしれないが、それまでのオンプレからクラウドに移行することで、すでに大きく環境負荷が軽減しているのは明白だ。
さらに今回のセッションであった話のように、クラウドを活用することで可視化・分析して様々な事業をサステナブルに改変している。今後もクラウドによるイノベーションは必要不可欠。

おまけ

会場内にもドイツ語ですが以下のような掲示がありました。

セッション内でも触れられているデータ(上記「AWSの取り組み」を参照)に加えて、ヨーロッパのことが示されています。

  • Saving Energy in Europe by Using AWSの研究調査によると
    • ヨーロッパのオンプレをクラウドに移行することで約80%のエネルギー節約になり、
    • AWSに移行することで最大96%のCO2削減が可能となる
  • AWSはEUの平均的な企業よりも最大5倍効率的
    • あるEUの組織のデータセンターからAWSクラウドに1メガワットのワークロードを移行すると、最大で年間1,079トンのCO₂eが削減できる
  • エネルギー効率と高い使用率で節約を実現
    • AWSサーバは最新のコンポーネントの使用とパフォーマンス最適化にフォーカスし、高いエネルギー効率を誇る
    • 異なる利用顧客がリソースを共有・動的に割り当てられるため、たくさん使ってもらうことでさらにエネルギー節約
  • エネルギーとCO2排出削減の67%は、オンプレに比べてAWSサーバが高いエネルギー効率であり、多く利用されていることに起因する
  • 効率的な電源・冷却システム
    • エネルギーとCO2排出削減の13%は、AWSの高効率な電源・冷却システムによるもの
    • そのようなシステムは通常オンプレでは導入されていない

おわりに

聴講者の2、3割くらいがサステナビリティの企業や組織担当だったようですが、私のような初心者にも分かりやすい説明でとても興味深かったです。

正直、Amazonがこのような取り組みにちゃんと力を入れているイメージがなかったので、AWS Well-Architectedの6つの柱のひとつにもなっているとは知りませんでした。

VWのように技術を活用して可視化を実現することで、サステナブルに向けたプロジェクトを始動することができるというのは、様々な業界でも適用できる良い事例だと思いました!

その他の AWS Summit Berlin 2023 のレポートはこちらから!

参考サイト

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